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月夜の迷子たち
第11章 恋の種
「・・・・・そんなこと言ったら、私だって同じだよ。歯医者さんのこと、ちゃんと好きだったわけじゃないし・・・・・。それに、付き合うまではなくても、ご飯ご馳走してくれるからって理由で、好きでもない人とデートしたこと、数えられないくらいあるよ」
「それとは違う。俺の場合は、最初から相手を見下げて・・・・・傷つけるつもりで付き合った。最低な男だ」
「私のことも、そう?」

言われて俊はハッとしてレイアと目を合わせた。

「違う・・・・・・!」

俊の目はそれだけは信じてほしいと強く訴えかけていた。

レイアは俊の手をぎゅ・・・・・と握った。

「言ったでしょう?私、あなたが思ってるような清らかな人間じゃないよ。自分の父親と同じくらいの年齢の人が言い寄ってきたら、おだてて高いもの買ってもらったりご馳走してもらったりして、でも内心では『娘と同じくらいの歳の女の子相手にバカみたい』って思ってた。あなたと同じ。見下してたよ。勝手に私に夢中になって彼女と別れたり奥さんと揉めたりしても、そんなの知らない、私のせいじゃない・・・・・って。罪悪感なんて少しもなかった。あなたが最低なら、私も最低な女」

俊はじっと黙ってレイアの話を聞いていた。

「でも今は・・・・・・・。すごく酷いことしちゃったなって思う。身体目当ての人の方が圧倒的に多かったけど、本気で好きになってくれた人もいて・・・・・・。その人たちの気持ち、踏みにじったのよね。今更反省しても遅いけど・・・・・・」

好きだという気持ちは、こんなに心がふわふわしてむずむずして楽しくて嬉しくなるのに、それを真っ向から否定され、拒絶されたらどんなに傷つくことだろう。

俊への気持ちに気付いて、レイアはやっと、人を好きになる側の人間の心理を理解できたのだった。

きっと、俊も同じに違いない。レイアを好きになって、初めて過去の彼女たちへの懺悔の気持ちが芽生えたのだろう。

恋愛は残酷だ。
必ず想いが通じ合うとは限らない。一度通じたものが途中で切れてしまうこともある。

上手くいかなかった時の悲しみは身を引き裂かれる想いに違いない。
だからこそ、通じ合ったこの気持ちを大切にしたい・・・・・・。

「私のこと軽蔑する?」

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