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月夜の迷子たち
第11章 恋の種
俊もまた、他の人たちと同じようにレイアを美化しているのだとしたら、思っていたのと違うと幻滅したかもしれない。

レイアの不安そうな瞳を俊はまっすぐ見つめた。

眼鏡を通さずに見る俊の瞳は美しく澄んでいる。

戸惑いを見せていた瞳は、次第にレイアの瞳に魅入られたかのように熱を帯び潤んでいき、純粋さと情熱とが入り混じっているように見える。

俊はわずかに首を横に振った。
レイアは安心して小さく微笑むと、そっと指先で俊の頬を撫でた。

俊がレイアの顎に指を添える。わずかに唇を開いてレイアの唇に重ねた。

優しく唇を啄ばむようなキスを受け、レイアは胸が温かくなっていくのを感じていた。
レイアへの愛しさが伝わるキスだった。

唇を離して見つめあう。
俊の目は君の気持ちを聞かせて欲しいと訴えかけていた。
レイアは微笑んで言った。

「もっとキスしたいって思うってことは、好きってことよね?」

俊が思わず苦笑した。

「俺に聞くのか?」
「だって、今までこんな気持ちになったことないんだもん」
「・・・・・・初めて?」
「うん・・・・・初めて・・・・・・・」

どちらからともなく唇を合わせる。

先ほど俊が弾いた曲が遠くからかすかに聴こえてきた。
映画の中で使われている曲だったのかとレイアは初めて知った。

俊の身体から硬さが抜けた頃、レイアは俊の首に手をまわして尋ねた。

「舌、入れないの?」

俊は目を見開いて驚くと、途端に耳を赤くした。
レイアはきょとんとして、また変なこと言ってしまったかなと思った。

でも、恋人のキスというのはもっと激しいものではなかったか。
今みたいな優しいキスもいいが、先ほどのヴァイオリンを弾いた時に見せたような情熱を受けてみたいと思うのはいけないことなのだろうか。

「入れて?」
「~~~~~~っ」

俊は参ったと言わんばかりに顔を伏せてひとしきり照れた後、意を決したように顔を上げた。
冷静な仮面を取った、雄の部分が露になった俊の表情を見てドキリとする。

俊の唇が近づく。触れる直前に唇を開いた。

舌がためらいがちに入り込む。
レイアはすぐに俊の舌を捕らえて舌でなぞった。

俊の身体がわずかに震えたと思ったら、ぐいっと身体を押し倒される。
ソファの脇にあった品質の良いクッションが背中にあたってレイアは身を任せて力を抜いた。
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