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月夜の迷子たち
第12章 包まれる想い
「ねえ・・・・・・。私たちが、スウェーデン王室の誰かの隠し子だなんて話、ありえないよね?」

何また馬鹿なこと言ってんだよという玲央の返事を待ったが、返ってきたのは沈黙だった。

「・・・・・・・・」
「どうしたの?玲央、何か知ってるの?」
「いや・・・・・・。知ってるってほどじゃない。でも、どうしてそんなこと急に言うんだよ」

レイアはこちらで先ほど起こったことを話した。玲央は相槌も打たず、黙って聞いていた。

「そんなこと・・・・・あるわけないよね。あまりにも突拍子もないことで、ちょっと混乱してるんだけど・・・・・・」
「・・・・・・母さんが大事にしてたアメジストの指輪知ってるだろ?紫色の。結婚式とか特別なとこに出席する時にだけつけてたやつ。友子さんが棺に入れたから今はもうないけど」
「うん・・・・・・。一度も触らせてくれなかったよね。大事なものだからって」
「俺さ・・・・・・。一度、一人でいる時にこっそり見たことあるんだ。だって異質だろ?貧しいまではいかなくても質素な生活の中で、あれだけどう考えても母さんに不釣合いだった。母さんの実家の誰かの形見かと思ってた。でも、あれは違う。指輪の内側に紋章が彫ってあった。『Jag saknar dig』という文字と一緒に」
レイアは押し黙った。

Jag saknar dig・・・・・・

スウェーデン語で、’あなたが恋しい’という意味だ。
「早くしないとお母さんが帰ってくると思って、紙だとなくしたり見つかったりするから、咄嗟に机の引き出しひっくり返して裏に文字を急いで書き写した。紋章は複雑だし、小さいから、よくわからなくて上手くかけなかったけどね。その後、すぐに母さんが入院して・・・・・・。母さんが死んで友子さんと暮らし始めて、そのことすっかり頭から抜けてた。引越しで机を片付けている時に思い出して。それから文字について調べたり、同じ紋章を探しはじめた」
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