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月夜の迷子たち
第12章 包まれる想い
「お母さんが生きてる時・・・・・・・時々、じっと私や玲央の瞳を覗き込んでたの。じーっと何も言わずに・・・・・・。なあに?って聞くと、あなたたちの瞳はお父さんと同じ色だから、お父さんと会いたいなと思う時は、自分の瞳を見るのよって言うの。まだ小さかったから、私たち二人で鏡の前に並んで自分の瞳見て、見たことない父親を想像した・・・・・・」

成長と共に父親に会いたいという気持ちは消えた。
瞳を見て父親を想像することもなくなった。
それは現実で会うことがなかったからだ。では、実際に会ってしまったら?

友子や玲央だけが自分の家族だと思う気持ちは揺ぎ無いと思うのに、自分と同じ色の瞳を見てしまったら・・・・・・?

一瞬でも父親へ愛情を感じてしまったら、友子への裏切り行為になる気がして、怖いのだ。
俊はレイアの恐怖を悟って強く抱きしめた。

「・・・・・・君の心の中に、わずかでも’会いたい’という気持ちがあるんだね?」

俊は核心をついてきた。

会いたくない、怖い、という感情のなかに、チラチラと見える気持ち・・・・・・。

鏡で自分の瞳を見ていた子供のころの、父を想像していた純粋な気持ちが、顔を出すのだ。

「会って、その後どうなるの?何になるの?一目会えたらいいって・・・・・ほんとうにそれだけ?」

一度会うだけで何になるというのだ。その後、再び連絡を取り合うわけでもないなら、会う必要などないではないか・・・・・・・。

「・・・・・そもそも、自分の都合で日本に突然来て、短い間にこんな大事なこと決断しろって、ずいぶん勝手だわ!」

レイアは徐々にわいてくる怒りを口に出した。
俊がわずかに笑った。

「何よ。なんで笑うのよ」
「いや、いつもの君に戻った気がして。怒りって、時として立ち直るのに役立つ感情なんだな」
「もう!意味わかんないよ!」

レイアはフイっと顔を背けた。
俊はぎゅ・・・・・とレイアを抱きしめる腕に力を込めた。
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