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月夜の迷子たち
第12章 包まれる想い
「それをね、私が無理を言って・・・・・・、ううん。もう余計な隠しごとはしないわ。真奈がね、私をこの世にとどまらせるために、そうさせたのよ」
「・・・・・・どういう意味?」
「私と真奈の話、ちゃんとしたことなかったわね。長くなるけど、聞きたい?」

レイアは黙って頷いた。

友子はレイアを見てにこっと笑うと、窓の外を見て遠い目をして話した。

「・・・・・・真奈と会ったのは、中学二年生の時だった。あの子はとびきり目立つ子だったから、入学した時から知ってたけど、ちゃんと話したのは中学二年生の5月。新緑が綺麗で、私は図書室で校庭の樹を眺めながら画集を見てた。私が好きなオフィーリア。それを机の上に開いてただひたすらじっと眺めて、また窓の外を見て。今思うと、そんな自分に酔ってたのね」

友子の眼差しが少女のようだった。レイアは黙ってじっと聞いていた。



母の真奈は金沢の古くから続く地主の娘だった。
美しくて、朗らかで、誰にでも親切で・・・・・・。女子校に通っていたが、他校の男子から頻繁に告白されていたという。
友子は真奈のことは知っていたが、クラスも違ったし、家も遠かったため接点もなく過ごしていた。

「そこにね、真奈が来てね。『素敵な絵ね』って声かけてきて。窓から優しい風が入ってきて、真奈の髪がふんわり揺れて。多分、もうその時に恋に落ちてた」

レイアはドキリとした。
友子から母への想いをはっきりと聞いたのは初めてだった。

「なんて綺麗な子なのかしらと思って見惚れちゃって。オフィーリアがどんな女性だったかって話をしたと思うんだけど、はっきり覚えてないくらい心奪われたわ。ただ綺麗なだけじゃなくて、内面の美しさが溢れ出ていて・・・・・。私たちのいた学校はキリスト教系だったけど、彼女こそマリア様みたいな子だと思ったわ。自分のことより人のことを考えて行動して、心が清らかで、小さい子にもお年寄りにも誰にでも本当に優しかった」

その後、真奈は友子のことが気に入ったのかよく図書室に来るようになった。
二人で画集を見ることもあれば、海外の建造物の写真を見て、これが素敵、ここに行ってみたいねと沢山話をした。
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