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月夜の迷子たち
第12章 包まれる想い
部屋の明かりはついておらず、カーテンは閉め切られていた。
カーテンの隙間から日差しが入り込んでいるだけの薄暗い部屋だった。
おそらくこのホテルで一番良い部屋なのだろう。広い室内に、豪華な家具や調度品がバランスよく配置されいた。

最初に征哉の姿を見て、レイアはホっとした。これから未知の世界に突入するのだ。味方がいてくれることに安心する。
レイアたちが部屋に入ってきたと気付いて、ソファに座っていた人物がゆっくりと立ち上がった。
口をわずかに開くが言葉が出てこない様子で、その場から動かず、ただひたすら二人の姿を見つめていた。
もう一人の男性がレイアと玲央の前へと歩み寄った。黒い髪と黒い瞳のメガネをかけた細身の男で、無表情で何を考えているかわからない不気味さがあった。この男がモーリスだった。

征哉がすぐ防御出来る様にレイアの斜め前に立つ。

「This is a secret, please don't tell anyone else.」

モーリスがレイアと玲央に向かって静かに言った。

「このことは秘密だから、他の誰にも言わないでほしい」

俊がレイアに向かって強張った声で訳した。先ほどの征哉の話を聞いたからか、俊もモーリスのことを警戒していることが伝わってくる。

そんなことはわかっていると言いたかったが、相手の方も念のために確認しているにすぎないと思い、レイアは素直に頷いた。

フレデリクと名乗る人物は、レイアと玲央の前に遠慮がちに立った。

レイアは俊の手を強く握りながらフレデリクをおそるおそる見上げた。

背が高く、がっしりとした骨格はアクションスターみたいだった。
金色の綺麗な髪はゆるやかなウェーブがかっていて、うしろになでつけられている。触らなくてもわかる。レイアと玲央と同じ髪質だ。

そして、レイアと玲央と同じ色の瞳・・・・・・・。

薄暗い場所だとグレーに見える。きっと、明るい光の下で見たら、薄いブルーの瞳・・・・・・。

「Thank you for coming.」

フレデリクはレイアに手を差し伸べて握手を求めた。
レイアは身を縮ませて目の前に差し出された大きな手を凝視した。

「・・・・・・・・」

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