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月夜の迷子たち
第12章 包まれる想い
征哉がモーリスを睨みつけながら言った。

全員がモーリスに視線を向けた。

「・・・・・・何のことか、意味がわからないな」
「・・・・・・モーリス?本当なのか・・・・・・?」

フレデリクが眉を寄せながらモーリスに尋ねた。

「やめてくれ!この男と私と、どっちを信用するんだ?」
「真奈さんが出産したと知って、あんたは相当狼狽した。もうその時はあなたの妹とミスター・エリストンは結婚していた。認知などさせるか、養育費など払わせるかと躍起になっただろう。あんたは事態を終わらせるべく日本に帯同した。そこで情に訴えかけて、自ら身を引くようしむけたんだ。慈悲深い彼女は拍子抜けするくらい素直に身を引いただろうな」

モーリスは不敵な笑みを浮かべた。

「ずいぶんと想像力が豊かな日本人だな」
「あんたが、自分の生い立ちに同情してくれる心優しい女だけ狙って油断させた挙句、惨いことしてるって話山ほど聞いたぜ。被害者の女性たち、みんなビール奢るだけで何でも話してくれたよ」
「・・・・・・・」
「ミスター・エリストン。あなたの妻は一部の視野が欠損する原因不明の病気だった。これから子どもも産まれる。心優しいあなたにとって、すぐに真奈さんの元に行くことは難しかったでしょう。でもいつか必ず迎えに行く。その愛情の印として指輪を渡した」
「指輪・・・・・・!?何の指輪だ!?まさか・・・・アメジストじゃないだろうな!?」

モーリスの表情がとたんに険しくなった。

「そうだ。彼女に私の誠意をわかってもらいたかった」
「・・・・・・ふざけるな!あれは直系が受け継ぐものだろう!ユリアのものじゃないのか!」
「あの指輪は母の棺に入れた。葬式は火葬だ。指輪は燃えてなくなったよ」

玲央がモーリスを睨みつけながら言った。

「・・・・・・そうか」

フレデリクは怒る様子もなく、淡々と受け入れていた。
モーリスは信じられないと首を横に振ってフレデリクに詰め寄った。

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