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月夜の迷子たち
第2章 再会
「アトリエを用意したんだ。見てみてくれる?」

もうアトリエを用意していることに紗奈は驚いた。   

祐哉は杖を手にして紗奈の返事を待たずに歩きだした。

紗奈は迷いながらもついていった。

「集中して描けるように、離れにしたんだ。この家はなんだかんだで人の出入りが多いから。寝室はこっちの家に用意してあるから、行ったり来たりで面倒かもしれないけど」

祐哉は杖をついているにもかかわらず、紗奈を自然なしぐさでエスコートした。
扉を開け、段差のある場所で手を貸す。

入ってきた玄関とは違う出口から庭園に出た。
美しい花や木々がバランスよく植えられている庭を眺めた。
ビーナスの石造が中央に置かれた噴水の水が明るい日差しを反射していた。

庭の隅の、一際大きな木の下にある二階建ての木造の家にたどりついた。

「曽祖父の趣味が狩猟で、ここは狩猟道具を手入れするために使ってた場所なんだ」

そう言って祐哉がドアをあけると、そこには大きな真っ白いキャンバスが置いてあった。
高さが調整できる椅子に、イーゼルにたくさんのスケッチブック、絵の具なども全て揃っている。

大きな棚に、広いテーブル。窓際に大きなソファが置いてあった。
シンプルなアンティークの家具のところどころに白い陶器の過敏や置物が置かれていて、絵本に出てきそうな可愛らしい部屋だった。

東側には庭に直接出られるよう大きなガラス窓になっており、庭の景色が良く見えた。

(素敵・・・・)

先ほどの応接間よりずっと落ち着く。木々から差し込む木漏れ日が、あの山小屋を思い出させた。

「少し君のアトリエに雰囲気が似てると思わない?」

思っていたことと同じことを言われ、紗奈はドキリとした。

「ええ」
「気に入ってくれた?」

祐哉が紗奈の目を覗き込んで尋ねた。
どうか気に入ったと言ってくれ、と懇願のようなものが見て取れる。
紗奈は苦笑した。

「とても素敵です」

ここなら・・・・。あの家から離れたこの場所なら、描けるかもしれない。
人になるべく会わずひっそりと・・・あの少女にも会わずに済むかもしれない。

それに、これだけ用意されてしまっては断るなど紗奈には到底無理なことだった。
自分が引き受けなかったら他の画家に描かせるつもりもないと祐哉は言った。
もし断ったらこれらの道具はどうなるんだろう・・・・・。
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