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月夜の迷子たち
第13章 暗闇を照らす光
湖をぐるりと囲むように森が広がり、小鳥のさえずりが聴こえる。
こんな風に自分を飾ることなく、心が落ち着いた状態でいるのは何年ぶりだろう。
思えば、ヴァイオリンを弾いていた頃も、中園で働き始めてからもずっとどこかで張りつめたものが常にあって、ここまでリラックスできたことはなかった気がする。
誰かに必要とされたいがために、素の自分でいられない。そんな感じだった。

でも今は・・・・・・・。

俊はレイアの肩に手をまわしてぎゅ・・・・・と抱きしめた。
レイアは、飾らず、そのままの俊を知りたいと思ってくれている。
レイアには本当の自分を見せても大丈夫だと思える。
それはきっとレイアがそうしてくれてるからだった。

俊はレイアの頬にキスした。
レイアは少女のように微笑んだ。

「ねえ、俊はどうして私を好きになったの?最初に会った時、まだ私のこと良く知らなかったのに」

聞かれて俊は言葉に詰まった。

「なんでかな・・・・・・」

俊はあの時の気持ちをどう説明したらいいのかわからない。

「・・・・・・君と玲央くんが撮影会で変装しただろ。『ベニスに死す』のタッジオに」

レイアは急に話題が変わったと思ったのか、一瞬「え?」という顔をした後に頷いた。

「あの映画で、主人公は友人と『美』について議論するシーンが出てくるんだ。主人公は音楽家だから『美は芸術家に造り出すことができる』と主張する。でも友人はこう返す。『究極の美とは自然と発生するものであって、努力で造り出せるものではない』」
「ふーん?」

レイアにはいまいちピンときていないみたいだった。俊は内心苦笑した。
レイアや玲央のように自然発生した美の当事者にとっては、そんなことはどうでもいいのかもしれない。

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