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月夜の迷子たち
第13章 暗闇を照らす光
俊は思わず後ろを振り返って、誰かに見られていないか確認する。
ワインの通路には人がいなくてホっとする。

「俊、好き」
「・・・・・・・・」
「俊も言って?」
「・・・・・・ここで?」
「うん」

たまに街中で見かけるイチャついたカップルを冷たい目で見ていた自分に、レイアは同じことをやれと言っている。
俊は心の中で激しく葛藤した。なぜか征哉の顔が浮かんで、あの人だけには絶対見られたくないと思った。
しかし、今ここには二人を知る人は誰もいない。レイアが求めていることに応えてあげたいと思った。

「・・・・・好きだよ」

レイアが嬉しそうに、えへへと笑う。
この笑顔のためなら何でもすると思えるほどに愛しかった。
水菜とラディッシュのサラダと、アスパラとささみのジェノベーゼパスタとバゲッドがテーブルに並んだ。

「すごい!レストランみたい!」

レイアは椅子に座って感嘆の声をあげた。
日が沈みかかって、湖は夕日のオレンジ色と深い藍色が混ざって幻想的だった。
窓を開けてレイアのリクエスト通り、景色を見ながら食事を始める。
レイアは美味しいと大喜びだった。
パスタは自信がなかったが、思ったより美味しくできて俊もホッとしながら食事を楽しんだ。
食後にレイアには桃のデザートを出した。

「ねえ・・・・・・。俊のお母さんて、どんな人?」

レイアが湖を眺めながら、ふと尋ねた。
俊も湖に視線を移した。

ここで母と過ごした日々のことを思い出す。
まだあの頃は母から楽しくヴァイオリンのレッスンを受けていた。
俊がミスなく弾くと、満面の笑みで褒めてくれていたあの頃・・・・・・。

「そうだな・・・・・・。元々はそんなに厳しい人じゃなかったんだ。でも、叶わなかった自分の夢を息子に叶わせたいと強く思ううちに、どんどんいろんなことを見失ってしまった。彼女もまた、苦しかったんだと思う。母親である自分と、一人の人間である自分との間でもがき苦しんでたんじゃないかな」

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