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月夜の迷子たち
第13章 暗闇を照らす光
「俊が言うほど狭くなかったよ。二人で一緒に入れたと思うけど」
「・・・・いや、狭いって・・・・」
「次は一緒に入ろうね」

レイアはそう言うと俊の首に手をまわしてキスしてきた。
シャワー上がりのしっとりとしたレイアの唇の感触があまりに柔らかく俊は理性を失いそうになって眼を瞑った。シャンプーの香りが鼻をかすめて、もうこのままこのベッドに押し倒そうかという衝動に負けそうになる。

「・・・・俺もシャワー浴びてくる」

レイアは無言で頷いて俊の身体から離れた。お互いが早く身体を重ねたいと強烈に想っていることがわかってもどかしかった。それでも、俊は自分の身体を清めたかった。
レイアの身体に初めて触れるのだ。それはまるで洗礼を受ける儀式のように、俊にとってどうしても必要だった。
俊はシャワーを浴びながら自問自答していた。

なぜレイアに惹かれたのだろうか。彼女の容姿なのか。確かにレイアは俊が見てきた女性の中で一番美しい。しかし、レイアほどでなくても外見が秀でている女性たちは沢山見てきた。自分の母も世間的に見たら美しい女の部類に入ると思うが、俊にはギリシャ神話の本の挿絵にあったメデューサに見えた。それは母の内面が元来持っていた美しさを歪めてしまっていたのだと思う。
そう、結局はレイアの内から溢れ出る彼女の愛らしさがその表情に現れ、俊はそこに惹かれたのだ。最初に出会った時は、レイアの‘明’の部分に惹かれた。それは間違いなかった。
しかし、今はそれだけではない。弱く脆い部分も、誰かを憎くんで苦しむ部分も受け止めてやりたいと思う。レイアの‘暗’の部分の感情も否定せず認めたいと思う。

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