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第2章 再会

「じゃあな、頑張れよ。何かあったらすぐ連絡しろよ」

耕太を見送りに屋敷の大きな玄関まで来ると、急に心細くなった。
玄関の扉を開けると、耕太の車が既に用意されていた。

「まあ、正直なところ、あんな山奥に一人でいるより、ここにいてくれた方がこっちとしては安心だ」
「香織ちゃんの体調、どう？」
「順調だよ。あいつもお前がここにいた方が安心だって言ってる。こっちにいる間に一度会いに来いよ」
「うん。わかった」

紗奈は不安な気持ちを悟らせないよう笑顔で答えた。
耕太はまだ何か言いたげな様子だったが、紗奈の頭をポンポンと優しく叩くと手を振って車に乗り込んだ。

門が閉まって、車が見えなくなる。

紗奈は寂しい気持ちを打ち消すように自分の頬をパン！と叩いた。

（頑張ろう・・・・・私に出来ることは全部出し切るつもりで・・・・・・！）

まずは下準備だ。夜に祐哉と肖像画について打ち合わせすることになっている。
紗奈はアトリエへと向かった。

オフィーリアはもう、数え切れないほど描いた。

最初に見たのは、確か中学一年生だった。
まさに衝撃だった。
水に浮かぶオフィーリアの身体の生々しさ、生死を彷徨う表情、植物の美しさ・・・・。
ひたすら模写した。少しの狂いもなく、忠実に再現したいという強い欲求が生まれ、ものすごい集中力を身につけた。それだけ惹きつけるものがあった。

今の紗奈の複製画のクォリティを決定付けた作品といってよい。紗奈の複製画の作成における原点だった。

おそらく補助線なしでも描ける。でも、今回はかなりの高額な報酬をもらっているわけで、完璧でなくてはというプレッシャーのため、慎重にスタートする。

生成りのワンピースに黒いエプロンといった、いつものスタイルで、髪はうしろで１本の三つ編みにした。

紗奈の集中力にスイッチが入った。まわりの音が消えた瞬間だった。