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月夜の迷子たち
第3章 閉じられた扉
すらりと伸びた手足、ウェーブがかった茶色く長い髪、陶器のような白い肌。いつも彼女を見るとギリシャ神話の女神のようだと思っていた。そして一際魅力的な、彼女の内面の明るさを湛えた輝くハシバミ色の瞳・・・。

「レイアちゃん・・・・?」
「やっぱり!紗奈っちだ!!」

レイアは、だーーっと紗奈に駆け寄り抱きついた。

「うわあ!久しぶりだねえ!会いたかったよお!!」

ふわりとバラの香りがしてた。

「レイアちゃん・・・・レイアちゃん!!」

紗奈もレイアに思い切り抱きついた。

「へえ!君たち知り合いなの?」

征哉が楽しそうに二人を見て言った。

「高校の同級生!うわー!すごい偶然だねえ!なんでこんなとこに・・・・って、もしかして、祐哉くんの?画家って!?」

レイアは少し身体を離して、紗奈を見つめた。

「ここで絵のお仕事させてもらってるの」

紗奈は恥ずかしそうに答えた。

「そっかぁ・・・・・!良かった、絵、続けてたんだね」
「うん」
「そっかそっかぁ!あー嬉しい!!」

高校時代仲の良いグループは違ったが、何かと積極的に話しかけてくれたのがレイアだった。
あの時と変わらないレイアの態度に紗奈はホッしていた。

「あー・・・・じゃあ、紗奈っちなのかぁ、祐哉くんの・・・・・」
「レイアちゃん」

征哉がレイアに目配せしてそれ以上言うなと制した。
レイアは、ああー・・・・と頷くと紗奈に向かってニコッと笑った。

「今からどこか行くの?」
「お風呂に。昨日入ってなくて」
「そうなんだ。じゃあ、私も一緒に入ってもいい!?」
「えぇ!?」

驚く紗奈の手を引いて、さっさと屋敷の中に入る。

「征哉くん、いい?」
「もちろんいいよ。僕も一緒に入ってもいいなら」

征哉の冗談と思えない言葉に紗奈はぎょっとした。

「あはは!私は別にいいけど。てか、弟くんに殺されるんじゃないかな」
「君たち二人と一緒に湯につかれるなら殺されてもいいね」

レイアがまたあはは!と笑った。

その時、庭から追いかけるように藤原が足を速めて近づいてきた。

「失礼します、征哉様、会長からお電話です」
「・・・・いないって言って」
「それが・・・・大変お怒りのご様子で・・・・」
「だから、いないって言ってよ」

征哉はふん!と駄々をこねる子供のように拒絶した。


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