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月夜の迷子たち
第3章 閉じられた扉
「私も興味があればそういう道もありだったかもだけど、特に興味ないし。でもさ、やっぱりお金、稼げそうでしょう?友子さん闘病中だし、どうにかしてお金稼がなきゃなーって最近は思ってる」

友子は今入院していて、紗奈が看病しているのだという。
友子は看護士をして双子を育ててきた。決して裕福な生活ではなかったが、双子に芸能活動などをさせて稼ごうなどという気は全くなかったようである。

「しばらくこの家にいるんだよね?嬉しいなー。また紗奈っちと会えて。私も紗奈っちがいる間、ここで暮らそうかなぁ」
「そんなことできるの?」
「できると思うよ。征哉くん、適当だから」

レイアはあはは!とまた無邪気に笑った。

紗奈もつられて笑った。

懐かしい気持ちと安心する気持ちと、温かい湯。

紗奈は久しぶりにリラックスしていることに気づいた。
やはり慣れない場所での仕事は、緊張を強いられていたようだ。

昔話や近況を報告しあいながらゆっくり過ごした。
バスルームから出た時にはもう日が暮れていた。


「紗奈っち、ちょっと顔色悪いよ。身体も細いし・・・・。もっとちゃんと食べたほうがいいって!キッチンに行って美味しいご飯もらおう!」

まるでここの住人みたいに遠慮なく振舞うレイアに紗奈は苦笑した。
この天真爛漫さがレイアの大きな魅力だ。

ふと、キッチンへ向かう途中のホールの片隅に置かれていたソファとテーブルに、二人の男性が座っているのが見えた。

「あ!祐哉くん!と、その秘書!」

レイアの声に二人が顔を上げた。
テーブルにはチェスが置かれていて、祐哉がキングを手にしているところだった。

「’その秘書’は、やめろ」

俊が冷たい目でレイアを睨んだ。
レイアは全く動じず、紗奈の手を引いて二人のもとに駆け寄った。

「秘書、どいて」

レイアが満面の笑みで俊に向かって言った。

「・・・・・なんだと?」

俊の頬がわずかに引きつる。

「もう、秘書のくせに気がきかないなぁ!」

そう言って俊の腕に自分の腕を絡めて立ち上がらせる。

「さ、紗奈っち、ここ座って」

紗奈を俊が座っていた場所に座らせ、祐哉に微笑みかける。

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