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月夜の迷子たち
第3章 閉じられた扉
食堂に行くと、レイアと俊が二人で食事を始めていた。
レイアは紗奈たちに気がつくと手を振った。

「あ、ごめん!先食べちゃってまーす」

大きなテーブルに真っ白な遠目からでもわかる上質なテーブルクロスがひかれ、映画で見るような立派な燭台が中央に置かれていた。
その角の部分にレイアと小野瀬は座っていた。

俊が祐哉を見上げて言った。

「お前の部屋に運ばせようか?」
「いや、いいよ。ここで一緒に食べる」

祐哉が慣れた所作で紗奈のために椅子を引く。
紗奈はぎこちなく身体を動かして、椅子に座った。

「祐哉くん、どうだった?可愛かったでしょ?」

レイアが目をキラキラさせて祐哉に尋ねた。

「レイアさんのおかげで、自分の理性を抑えることがどんなに大変かということがわかりましたよ。”敵を倒した者より、自分の欲望を克服した者の方をより勇者と見る”を真に理解できました」

祐哉は紗奈に向かって意味ありげな視線を投げかけた。
紗奈はその視線を反らすようにしてぎこちなく水の入ったグラスに手を伸ばした。

「うん?どういう意味?小野瀬?」

レイアは祐哉の言わんとすることをすぐに理解できなかったようで、俊に尋ねた。

「・・・・・・」

俊は黙って食事を続ける。
答えてくれない俊は早々に諦めてレイアは腕を組んで考えた。

「欲望を克服した者が、勇者・・・・。えーと、つまり・・・あんまり可愛いかったんで、ぎゅーっとしたり、すりすりしたりしたかったけど、なんとか我慢したということ?」

俊がぎょっとした表情でレイアを見つめた。
それがおかしかったのか、祐哉が声を上げてあははと笑った。

「まあ、そういうことです」

紗奈は傍目からはっきりとわかるほどに赤面した。

ちょうど祐哉と紗奈の前に前菜が運ばれてきたところだった。
なんとか話題を変えようと頭をフル回転させる。

「あ、あの!!ゆ、祐哉さんと、お、小野瀬さんはどういったご関係なんでしょうか?」

慌てる紗奈を見て、祐哉がクス・・・と優しく笑って答える。

「まあ、一言で言うと幼馴染。今は仕事の手伝いもしてもらってる、てとこかな」

幼馴染か・・・・。秘書と雇い主にしては距離が近いなと思っていたが、納得がいった。
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