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月夜の迷子たち
第3章 閉じられた扉
「うそよ。祐哉くんに婚約者がいるなんて聞いたことないわ」
レイアが聞き捨てならないと間に入って言った。
「まだ公にしたおりませんので。一般的なご家庭の方たちのことは存じ上げませんけれど、婚約の発表をするのも準備が必要なんですのよ」
瑠花のゆるぎない自信に満ちた笑みに、紗奈の心がぎゅ・・・・と締め付けられた。
このような家の人間なら、それ相応の人間と結婚することは当たり前で、婚約者がいたとしてもなんら不思議ではない。
あの時の山小屋での彼女の様子からしても、婚約しているかどうかは別として、彼女にとって祐哉が特別な存在なのは間違いない。
紗奈の心が一気に暗く重くなった。
「そんなの・・・・祐哉くんの気持ちを無視してるわ」
レイアが珍しく憤慨している。
「面白いことをおっしゃりますのね。私の父と祐哉のお父様は古い友人です。本当は父は自分の妹と祐哉のお父様を結婚させたかったのですが、それは叶わず・・・・・。
娘の私が生まれて今度こそは中園の家の人間と結婚させようと、私はそのためにずっと躾けられ育てられてきたのです。これは家と家の約束事なのです。当人同士の気持ちなど・・・・。そのようなことをおっしゃるなんて、暢気な方なのですね」
瑠花はふふふ・・・・と少女のような可愛らしく笑った。
「それに、少し勘違いをなさっておりますわ。あの時、初めに子供が溺れていることに気がついたのは私です。私が助けるために川に飛び込もうとしたところを祐哉は君に行かせられないと。俺が行くから待っていてと、まだ事故の怪我から回復していないというのに私を気遣って飛び込んだのです。
私と祐哉の絆は一日二日で出来たものではありません。もうすでに夫婦としての絆を築き始めているのです」
瑠花の目はあなたになんか祐哉を渡すものかと敵意が溢れていた。
紗奈は圧倒されていた。自分の中で芽生え始めていた祐哉への想いが踏み潰されたような気がした。
「私は・・・・・絵のお仕事を受けただけです。仕事が終わりましたらすぐにいなくなります」
紗奈は自然な口調で言えるよう努めたが、声が震えてしまう。
レイアが聞き捨てならないと間に入って言った。
「まだ公にしたおりませんので。一般的なご家庭の方たちのことは存じ上げませんけれど、婚約の発表をするのも準備が必要なんですのよ」
瑠花のゆるぎない自信に満ちた笑みに、紗奈の心がぎゅ・・・・と締め付けられた。
このような家の人間なら、それ相応の人間と結婚することは当たり前で、婚約者がいたとしてもなんら不思議ではない。
あの時の山小屋での彼女の様子からしても、婚約しているかどうかは別として、彼女にとって祐哉が特別な存在なのは間違いない。
紗奈の心が一気に暗く重くなった。
「そんなの・・・・祐哉くんの気持ちを無視してるわ」
レイアが珍しく憤慨している。
「面白いことをおっしゃりますのね。私の父と祐哉のお父様は古い友人です。本当は父は自分の妹と祐哉のお父様を結婚させたかったのですが、それは叶わず・・・・・。
娘の私が生まれて今度こそは中園の家の人間と結婚させようと、私はそのためにずっと躾けられ育てられてきたのです。これは家と家の約束事なのです。当人同士の気持ちなど・・・・。そのようなことをおっしゃるなんて、暢気な方なのですね」
瑠花はふふふ・・・・と少女のような可愛らしく笑った。
「それに、少し勘違いをなさっておりますわ。あの時、初めに子供が溺れていることに気がついたのは私です。私が助けるために川に飛び込もうとしたところを祐哉は君に行かせられないと。俺が行くから待っていてと、まだ事故の怪我から回復していないというのに私を気遣って飛び込んだのです。
私と祐哉の絆は一日二日で出来たものではありません。もうすでに夫婦としての絆を築き始めているのです」
瑠花の目はあなたになんか祐哉を渡すものかと敵意が溢れていた。
紗奈は圧倒されていた。自分の中で芽生え始めていた祐哉への想いが踏み潰されたような気がした。
「私は・・・・・絵のお仕事を受けただけです。仕事が終わりましたらすぐにいなくなります」
紗奈は自然な口調で言えるよう努めたが、声が震えてしまう。