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月夜の迷子たち
第5章 満ちていく心
「チェック」

俊がナイトで王手をかけた。

「お前の誕生会は予定通り決行するぞ」

俊が有無を言わさない、力を込めた口調で言った。
祐哉がため息をつく。

「二十六の男の誕生会なんてやって、何が楽しいんだ」
「’中園家次男の嫁の座’争奪戦の場だ。楽しいに決まってるだろ」

祐哉はキングを手にした。

(そんな戦い、必要ない)

祐哉が紗奈の顔を思い浮かべた時だった。

「あ!祐哉くん!と、その秘書!」

レイアの声に顔を上げる。
すぐに紗奈の姿を捕らえた。

仕事に復帰したおかげで、ここ数日引継ぎなどで慌しかった。
久しぶりに見る紗奈は、レイアと並んでいるからか、記憶の中の紗奈よりもいっそう華奢で儚げだった。

絵に集中している時の力強さは、今はない。

レイアが気をきかせて紗奈と二人きりにさせてくれた。

湯上りの紗奈の頬と耳たぶがうっすらピンクに染まり、絹の髪がほつれて垂れたうなじの誘惑は強烈だった。何度も負けそうになったが、紗奈の真面目さがブレーキをかける。

今すぐその頬に、耳たぶに、うなじにキスしたい・・・・。

祐哉は征哉に帝王学だといって女性を紹介され、それなりに経験もある。
でも、これまでこんな風に強く自分のものにしたいと思ったことはない。

押し倒して、触れて、肌を、舌を思う存分味わいたい・・・・。
彼女の全てを手に入れたい・・・・・・。

こんな気持ちを抱くことに、祐哉本人が一番驚いていた。

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