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月夜の迷子たち
第5章 満ちていく心
「彼女は・・・・・俺やお前が思ってることで・・・・・つまり、家のレベル云々で俺を拒絶してるんじゃないと思う」
「どういう意味だ?」
「踏み出せないんだ・・・・・・人の心に終わりが来るのが怖くて・・・・・」

俊も紗奈の出自を知っている。ある時期に叔父の養子になっていることも。

そのことですぐに察知したらしかった。

「だとしたら、一筋縄ではいかないだろうな」

俊もまた自分の母親との確執で苦労した人間だった。おそらく自分よりも紗奈の立場を理解できるに違いない。

「それも覚悟の上だ。俺は絶対に諦めない」

闘志を燃やす祐哉の横顔を見て俊が苦笑した。

「長いつき合いだけど、そんなに熱くなったお前を見るのは初めてだな。親友として喜ぶべきか、まだ迷うが」

まだ少し戸惑いを残しながらも応援することを決めてくれた俊を見て、祐哉は自分は本当に恵まれているとつくづく思う。

だからこそ、紗奈を受け入れたい。それが出来るのは自分しかいない。
祐哉の心の中で、会えないからこそ、紗奈への想いが強くなっていくのだった。
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