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月夜の迷子たち
第5章 満ちていく心
誕生日会は予想以上に退屈で、何も心に響かなかった。
顔に出ていたのか、俊に主役なんだから笑えと本気で怒られた。

着飾った美しい女性たちが自分に気に入られようと作った笑顔を振りまくのを見て白けた気持ちになる。

彼女たちはむなしくならないのだろうか。こんな無機質な感情の持ち主と本気で結婚したいと思っているのだろうか。金のため、家のために?

しかし、祐哉は彼女たちを馬鹿にすることはできない。
祐哉もまた、彼女たちと同じように豊かな富を与えられ、ぬくぬくと生活しているのだから。

ここにいるはずのない紗奈を無意識に探してしまう。
彼女がここへきて、おめでとうと一言言ってくれたら・・・・。
どんなに高価なプレゼントにも勝るというのに・・・・。

誕生会が始まる前に、今夜紗奈はアトリエの鍵をあけて待っていると征哉が教えてくれた。

祐哉はいてもたってもいられず、窓から紗奈のアトリエの方を眺めた。
月明かりの下で、アトリエ小屋がぼんやりと浮かび上がっている。

すると、屋敷に続く小道を紗奈が歩いているのが見えた。
すぐさま理由をつけてパーティ会場を抜け出すことを決める。

兄とすれ違いざま目が合う。

まかせておけという目配せを受け、兄の察しの良さに改めて感謝した。
主役が抜けては怪しまれる。征哉はマイクを手に取り、予定になかったビンゴ大会なるものを今から急遽やると言い出した。
優勝者には征哉と祐哉とゴルフができる権利、二番以降は宝石やら旅行券やらを贈呈するとなって、会場は大いに盛り上がった。

人々の歓喜の声を背に、祐哉は屋敷の外へ出た。

紗奈が屋敷の裏へと続く道へ消えていくのが見え、後を追う。
温室に入った紗奈は、ピアノの前に座ると、たどたどしい手つきで『月の光』を奏で始めた。

紗奈の小さな背中を見て、胸がしめつけられる。
彼女はどんな気持ちで今夜自分の訪問を迎えようとしているのだろう。
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