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月夜の迷子たち
第6章 恋の炎
「レイアちゃん、誰かにキスされたの・・・・?」
「うん。最初ね、私、からかってやろうと思って、キスするふりしたの。こう、顔を近づけて。本当にするつもりはなくて、冗談で。そしたらすごい怒った顔して。あ、やばい怒らせちゃったと思った瞬間、ぐいーっと・・・・」

一体誰に・・・・と聞こうとした時、征哉が走って戻ってきた。
既に衣装が用意してあったかのような素早さだった。

「お待たせ!どう?」

征哉は濃紺のスーツにクリーム色のベスト、ワインレッドの蝶ネクタイという姿で現れた。一番のポイントは黒い布を眼帯にして右目を覆っている。

「征哉くん、すごーい!この短時間でそこまでしてくるなんて!」
「似合う?」
「すごくかっこいい!誰の真似かはわからないけど」

征哉は満足げに微笑むと、二人の女性をエスコートして撮影部屋に入った。

「やあやあ、みなさん。どうも」

征哉は意気揚々と撮影場所に登場した。
おば様たちがタンクレディよ!ときゃあきゃあはしゃぎだす。

「タッジオ、タンクレディの横に並んで!」

誰かの言葉に、玲央がいやいや立ち上がり、征哉に近づく。

征哉はその時初めて玲央に気がついた。

「え・・・・・ええーーーっ!?」

レイアが間に入って、弟を紹介した。

「弟の玲央です。玲央、この人はこの家の・・・・ご子息?の征哉くん。まあ、こう見えて偉い人よ」
「初めまして・・・・。宮森玲央です」

ペコリと頭を下げる。初対面でコスプレをさせられている恥ずかしさを抑えるために玲央は不機嫌さを増して挨拶した。
征哉はぽかんと口を開けて玲央を遠慮なくまじまじと凝視した。

「え・・・・ちょ・・・・レイアちゃんて双子だったの!?」
「そうだよ、言ってなかった?」
「聞いてないよ!こんな・・・・超絶美しい弟君がいたなんて!!タッジオじゃん、まんまタッジオじゃーん!」

征哉の興奮はすさまじかった。
玲央は完全に引いてしまっており、その蔑みの目が余計に征哉を興奮させる。

「うわぁ・・・この虫けらを見るような目・・・・ゾクゾクしちゃう!レイアちゃん、この子やばいよ!!」

征哉はレイアにしがみついて乙女のように頬を染めた。
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