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月夜の迷子たち
第6章 恋の炎
「ラテン語、古典ギリシャ語、古典ヘブライ語はもちろん、古典サンスクリット語、古代シュメール語・・・他にもいろいろ嵌ったよ。言語は人類の歴史や文化を知る重要な手がかりだからな。興味は尽きない。あれ?でも待って?レイアちゃんの弟ってことは君もスウェーデンに縁があるんだろ?古ノルド語は?ルーン文字は?」
「本当はやりたいんです。でも授業が取れなくて・・・・・」
「ではこの僕が教えてあげよう。そこらへんの学者より知識はあるから安心したまえ。まずはアイスランド語を教えてあげよう」

玲央は目をきらきらさせている。
これで玲央は完全に征哉の手中に堕ちたといえた。
征哉の話に釘付けになっている。

タンクレディとタッジオが肩を寄せ合って何やら話し込んでいる姿はおば様たちを喜ばせた。奇跡のコラボ!と言って写真を撮りまくっている。

紗奈も持ってきたスケッチブックでその様子をスケッチした。
被写体として文句なしの人がこんなに沢山いるのに、描かないでいられなかったのだ。

「征哉くんて、ほんとすごいよね・・・・。玲央が初対面の人とあんなに早く打ち解けるなんて普通ないもん」

レイアが感嘆のため息をついた。
紗奈も同感だ。征哉は掴み所のない人間だが、人に心を許させる魅力を持っている。それはおそらく、征哉の方から心を開いて待ってくれるからだ。

「ウィーン少年合唱団?」

頭上から聞きなれた声がした。見上げると祐哉が立っていた。

「祐哉さん・・・・・」
「可愛いね。似合ってる」

祐哉が優しい眼差しで褒めてくれる。
紗奈は照れながらも、祐哉が側にいる嬉しさで思わず微笑み返す。

「もう、タッジオだってばぁ~」

レイアが抗議するが、兄弟共に同じことを言うのだから、おそらくタッジオには見えないのだろう。

そうなんだと祐哉がクスクス笑う。
今日は仕事が休みのようで、薄手のブルーのニットにジーンズというラフな姿だった。ほのかに香水の香りがして紗奈はドキドキした。
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