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月夜の迷子たち
第6章 恋の炎
「彼、すごいね。彫刻が動き出したみたいだ。レイアさんのお兄さん?」
「弟なの。双子の。めでたく征哉くんのおもちゃに任命されました」
「運悪く、だろ?」

祐哉が隠れて鉛筆を持っている紗奈の手をきゅっと握った。
愛しいといった風に手の甲を撫でられ、皆に見られないかとどぎまぎした。

その時祐哉たちの叔母がやってきてレイアに声をかけた。

「ねえ、モデル代倍出すから、楽器弾いてみてくれない?ピアノでもバイオリンでもフルートでも」
「倍!?・・・・やりまーす!」

レイアは急いで玲央のもとへ行って交渉した。
玲央はものすごく嫌そうな顔をしたが、征哉がいいね!と反応した。

「君、何か弾ける?」

征哉が玲央に尋ねた。

「バイオリンなら・・・・少し」
「よし!じゃあ、カルテットやろう!俊が第一で玲央くんが第二、チェロは藤原で僕がビオラ。あ、祐哉!祐哉ピアノやって!」

征哉の指示であれよあれよと楽器と楽譜が用意される。





「・・・・・嫌です」

休みだというのに無理やり連れてこられた俊はこれ以上ないくらい冷徹な目で征哉を睨んだ。俊も今日はスーツではなく、白いTシャツに黒のパンツ姿で、いつもよりずっと若々しく見え親しみを感じさせる雰囲気だった。

「ノリ悪いなぁ。お前が弾かなかったらカルテット成立しないよ?レイアちゃんの弟君も嫌々ながら参加してくれるのに、中園の人間が断ったらねえ?おかしいよねえ?こんな格好させちゃってさぁ。そもそも僕らの叔母様の提案なのに、断るのおかしくない?」

俊は玲央に視線を移した。既に挨拶は済ませてあったが、間近で見るとまた違うのか、一瞬怯んだような顔をした。

「あの・・・僕そんなにうまくないですけど。レパートリーも少ないし・・・・」

不安そうに征哉に訴えかける。
征哉がよしよしといった感じで頭を撫でる。

「大丈夫、俊が二人分弾くから」
「弾けません」
「玲央くん、パッヘルベルのカノンは弾けるよね?ハイドンのセレナーデは?」

俊を無視して玲央に優しく語り掛ける。
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