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月夜の迷子たち
第6章 恋の炎
紗奈はこっそり俊とレイアを見比べた。
あの俊が強引にレイアにキスをしたというのだろうか。
紗奈には想像できなかった。

セレナーデとカノンが終わると、誰かが声をあげた。

「やっぱり、マーラーのアダージェットが聴きたいわ!」

まわりの人々が続々と賛成の声をあげる。

何のことかわからない表情をしている紗奈とレイアに向かって征哉が説明する。
『ヴェニスに死す』で使われているグスタフ・マーラー作曲の交響曲第5番第4楽章という曲とのことだった。

俊が身体を強張らせたように見えた。
先ほどまでの弾きたくないと拒絶するのとは違った、戸惑っているような、躊躇しているような表情だった。

「俊、アダージェットだってよ。ここはやっぱりバーンスタインでいこう」

征哉がニヤリと笑って俊の肩をたたいた。
玲央は弾けないと言うので、征哉がストラドを持つと、ピアノを弾く祐哉に楽譜を見せながらいくつか指示を出していた。

俊は腹をくくったかのように唇を引き締め、バイオリンに弓を当てた。
立ち姿がなんとも美しかった。

バイオリンとチェロとピアノによるアダージェットが始まった。

出だしはゆっくりと優しい切なげな旋律で始まる。
あとで聞いたが祐哉のピアノの音は本当はハープで弾かれているとのことだった。

音楽には疎い紗奈だったが、一気に惹きこまれてしまった。

(これは・・・・愛している人を想って作られた曲だわ・・・・・)

好きで好きで仕方が無い・・・・不安で、切なくて、でもやっぱり愛しくて・・・・。

そんな愛することの喜びと、苦悩に溢れた曲だった。
こんな美しい曲は他にはないと断言してしまえる、強烈に心に訴えかける曲だった。
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