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月夜の迷子たち
第6章 恋の炎
スクリーンには、玲央にそっくりなタッジオの姿が映っていた。
確かにこれはタッジオのファンなら色めきたつのも頷ける。
しかし、その美しさゆえに玲央もレイアも色々な苦労をしてきたに違いなかった。

紗奈は自分の幼少期のことに思いを馳せた。

親のことがわからなくて、でも本能で愛されたいと心で叫んでいる。
無性に寂しくなったり、不安になったり、そんな時に紗奈を助けてくれたのが絵だった。絵に支えられて生きてこれた。

玲央とレイアも、きっと同じような思いをしてきたに違いない。
お互いが支えで、お互いがいたから生きてこれた。
二人の絆が少しうらやましかった。


でも今は・・・・。
自分には支えてくれて、自分も支えたいと思う人がいる・・・・。

紗奈は立ち上がり、薄暗い部屋の中祐哉を探すがもうその部屋にはいなかった。

映画を見ていた征哉が紗奈に声をかける。

「どうしたの?」
「あの・・・・祐哉さんはどこかなと思って」

征哉は立ち上がり廊下に出る。紗奈もあとに続いた。

藤原がトレーを持って階段を上っていくのが見えた。
征哉が声をかける。

「祐哉は?部屋?」

藤原が立ち止まり頷いた。

「お部屋でお休みになられるそうです」
「それ運ぶの?」

藤原が再び頷いた。

征哉はトレーを取り上げると紗奈に渡した。

「彼女が運ぶからいいよ」

藤原はいつも通り何も言わず表情も変えずに頭を下げて去っていった。

「あの・・・・」
「祐哉の部屋知ってる?階段上って右の一番奥の部屋ね。最近いろいろ頑張ってるから疲れてると思う。癒してやって」

征哉は微笑んで紗奈の頭をよしよしと撫でると、映画がまだ上映されている先ほどの部屋へ戻っていった。

祐哉の部屋に行くのは初めてだ。
紗奈は迷ったものの、トレーを渡されてしまっては持っていくしかない。

胸をどきどきさせて階段を上っていった。

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