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炎の薔薇
第10章 炎

 会社から帰り、少し寛いでから夕飯の支度に取り掛かるところだった。

 こんな時間に珍しく、和也から電話が掛かってきた。

 次のデートの打ち合わせ?
などと呑気に考えていた自分は今思えば滑稽すぎる。

「もしもし」

 弾んだ声で電話に出た。

「あっ、茜………」

「どうしたの?」

「この次の約束が出来なくなったんよ……」

 和也の口調で様子が少しおかしいとは思ったが、まさかのまかさで……
真実に近づくまで気づけないでいた。

「あっ、仕事忙しいの?無理しないでいいよ」

「バッ、バレてしもうた……」

「えっ!?」

「写真撮られとる……」

「それって、探偵つけられたって事?」

「そうや。会って話をしたいとこなんやけど、二度と会わないっていうのが条件で今度ばかりは許してあげるって言われたんよ。
茜には一切迷惑掛けないようにとは言ったんやけど……」

 たどたどしく、何かに怯えたように絞り出すような声で和也は言った。

 私もいきなり頭の中がパニックになり、次の言葉が出てこない。

「もうこれっきりや。だから最期の電話だけ許して貰った」

 この一言で、一瞬にして怒りの炎に包まれていった。

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