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炎の薔薇
第13章 炎の薔薇
あの人と別れてから一年後、私は夫の樹生と離婚した。
理由は樹生の三度目借金が発覚したからだ。
借金という病気は中々治らないようだ。
「離婚してくれ」
そう切り出したのは樹生だった。
「なら、もっと早くあなたから解放されたかった」
これが私の本音だった。
心に激しい怒りの炎が湧き上がったが、この男といる限り、この炎は一生鎮火する事がないのだと気づかされた。
思い切り一発樹生の頬にビンタを打ち、「あなたの作った借金は全部あなたが精算しなさい。
麻央の親権は私が貰う。
あなたは借金を払いながら、麻央の父親としての責任は果たしていきなさい!」
それを約束させ、私はバツ一のシングルマザーとなった。
それだけで済ませたのも、私は樹生を毛嫌いし、不倫に走って裏切った負い目もあったからだ。
過去をしらばっくれて、離婚に応じずに樹生を雁字搦めにしてしまうのだけは避けた。
それをやってしまったら、和也夫婦と同類になると思ったからだ。
自分や相手が不満だと思う事をネチネチと言い争いながら暮らし、歪んだ心を同居させて、互いに我慢を強いるだけの夫婦じゃ意味がない。
麻央には可哀想な事をしたが、この選択はこれから幸せになる為の決断なんだと信じて踏み切った。
ポストに借金の催促状が届かなくなった事にも安心出来た。
長年苦しんでいた事から解放されて精神的にも楽になった。
これからは男に依存せず、自分の力で歩んで行くんだ!
いちばん大事な事はあなたが教えてくれた。
嫌いになれたら楽だった。
でも、もう好きじゃないわ。