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炎の薔薇
第1章 偽りのシンデレラ
この男は世間的に言えばエリートだ。
大学の助教授であり、化学者でもある。
論文を書いて、自分の研究したものを世界に発表している。
彼は昨日までボストンにいた。
帰国した足で私に会い、誕生日を祝ってくれたのだ。
この男は頭がいい。
難しい言葉も沢山知っているだろうし、研究の成果だって自慢したいだろうに、敢えて話を私に合わせる。
「日本語が懐かしい。
でも、毎晩茜ちゃんがパソコン越しに文字で話してくれたから、ホームシックにならんですんだ」
「英語が話せるって凄い」
「凄くもないさ。
仕事柄身についただけ。
俺から見れば、毎日仕事もして、家事もして、子育てしている茜ちゃんの方が凄いと思うで」
「凄くないよ。
結婚したらそれが当たり前なんだもん」
「当たり前の事が出来ひん人もおるからな。
頑張ってる女の人は皆偉い」
東京に染まりきれておらず、時折関西弁がチラッと出る彼。
そのイントネーションの響きも心地良かった。