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炎の薔薇
第1章 偽りのシンデレラ

「和也さんの奥様が羨ましいと思うわ」

「なんで?」

「こういった場所でのお食事も当たり前なのかなって」

「うちのは俺と外で飯なんて滅多に食べなくなったで。
子供の付き合いでママ友とかと好き勝手にランチなんて食べてるしな」

「勿体無いわね。
私なら和也さんにおねだりしてまた連れてきて欲しくなるわ」

「そう言ってくれるんやったら、やり甲斐あるんやけどな。
うちのは俺とあんまり出掛けたがらない」


 何気に交わす会話でも、夫婦があまり上手くいっていないのは窺える。

 冷え切っているまではいかなくても、夫に興味を失い、夫婦という形を維持し、立場を守る妻。


 和也はそんな奥さんを余り悪くは言わない。


 けど……

 言葉の裏側に不満を溜め込み、寂しそうな笑顔で誤魔化す。



 本当に頭のいい男だ。

 奥さんをクソミソに言う男は傲慢で品がない。

 女も同じだ。

 自分の旦那をクソミソに言う女は可愛げがなく、品がない。


 もしも、過去に戻れるのなら、その時の私に教えてあげたい。

 『品のない女に成り下がるな』と

 
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