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炎の薔薇
第1章 偽りのシンデレラ
あの時、奥さんの事を聞いたのは、ただの興味本位だった。
これからが始まりそうな予感はあれど、この段階で思い上がれるほど能天気には生きていない。
お互い、夫婦間に何の不満もなければ、既婚者がタブーすれすれのデッドラインに立つわけもなかった。
仮に今日の事がバレて問いただされたら、ただ食事しただけだなんていう言い訳も素直に聞いては貰えないだろうし…
常識的な既婚者は、異性と二人っきりになるのはなるべく避ける。
不倫のような非道徳的な事を嫌い、神に背くような生き方を決して選んだりしない。
神に背いてまでも思いを遂げようとする恋をするかしないかは、あらゆる選択肢を経て辿り着いた結果なんだと思える。
それは心に血が流れるほどの寂しさを噛み締め、救いを求めて手を差し伸べた先に迷い込んだ世界なのかもしれない……