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夢の欠片(くすくす姫サイドストーリー)
第2章 中編

扉が閉まる寸前にちらりと見えた向こう側は、普段見慣れた廊下とは全くかけ離れた光景でした。
…が、そんな事は今の男には全くどうでも良い事でした。
それよりもっと大事な事が、部屋の中に有ったのです。
「お前ら、大丈夫か?!」
「どうして…」
「床じゃなくて、こっちに座れ」
女二人はまだ呆然としておりました。男はまずはへたり込んでいる女を抱き上げて、そのまま長椅子に座らせました。侍女には家令が手を貸して、椅子に座らせてやりました。
「お前、軽くなりすぎだろ。それに、どうして、毒なんて…」
男は、触れて良いものかどうか躊躇いながら、女の体を緩く抱き寄せました。
白い簡素な服に身を包んだ女はすっかりやつれて、痩せてしまっておりました。美しかった手の指は傷だらけになり、足は辛うじて粗末な靴を履いておりましたが、汚れて血が滲んでおりました。
それでも、久し振りに触れた女の体は暖かく、幻などではないのだと、男は心から安堵しました。
「…何が何だか、分かりませんが…助ったんですよね…?」
事態が飲み込めない状況に先に折り合いを付け始めたのは、侍女の方でした。
「今の所は、そうで御座いますね。宜しければお茶をどうぞ、温まります」
「ありがとうございます。…お茶も、助けてくださったことも」
家令は軽く首を振って、侍女の前にだけでなく、女の前にもお茶のカップを置きました。
すると、ぼうっとしたままだった女の顔色が変わりました。
「…っ…」
「姫様!」
うずくまった女を見て、侍女はお茶のカップをテーブルに置いて、女の側に駆け寄りました。
「大丈夫ですか…家令様すみません、お水を頂けますか」
侍女はそう言うと女の背中をさすって、テーブルの上のお茶のカップを自分達から遠ざけました。
「お前…」
「なんでも有りません…ちょっと、具合が悪いだけ…」
男が久し振りに耳にした愛しい女の声は、か細く震えては居ましたが、きっぱりとした口調でした。
「水をお持ち致しました」
「ありがとうございます…飲めますか?」
「…ありがとう」
侍女が家令から受け取ったグラスを差し出すと、受け取った女は水を一口飲んで、ふうっと息を吐きました。
「とりあえず、休め。寝床を用意する」
「いいえ」
男は女に横になることを勧めましたが、女は首を振りました。
…が、そんな事は今の男には全くどうでも良い事でした。
それよりもっと大事な事が、部屋の中に有ったのです。
「お前ら、大丈夫か?!」
「どうして…」
「床じゃなくて、こっちに座れ」
女二人はまだ呆然としておりました。男はまずはへたり込んでいる女を抱き上げて、そのまま長椅子に座らせました。侍女には家令が手を貸して、椅子に座らせてやりました。
「お前、軽くなりすぎだろ。それに、どうして、毒なんて…」
男は、触れて良いものかどうか躊躇いながら、女の体を緩く抱き寄せました。
白い簡素な服に身を包んだ女はすっかりやつれて、痩せてしまっておりました。美しかった手の指は傷だらけになり、足は辛うじて粗末な靴を履いておりましたが、汚れて血が滲んでおりました。
それでも、久し振りに触れた女の体は暖かく、幻などではないのだと、男は心から安堵しました。
「…何が何だか、分かりませんが…助ったんですよね…?」
事態が飲み込めない状況に先に折り合いを付け始めたのは、侍女の方でした。
「今の所は、そうで御座いますね。宜しければお茶をどうぞ、温まります」
「ありがとうございます。…お茶も、助けてくださったことも」
家令は軽く首を振って、侍女の前にだけでなく、女の前にもお茶のカップを置きました。
すると、ぼうっとしたままだった女の顔色が変わりました。
「…っ…」
「姫様!」
うずくまった女を見て、侍女はお茶のカップをテーブルに置いて、女の側に駆け寄りました。
「大丈夫ですか…家令様すみません、お水を頂けますか」
侍女はそう言うと女の背中をさすって、テーブルの上のお茶のカップを自分達から遠ざけました。
「お前…」
「なんでも有りません…ちょっと、具合が悪いだけ…」
男が久し振りに耳にした愛しい女の声は、か細く震えては居ましたが、きっぱりとした口調でした。
「水をお持ち致しました」
「ありがとうございます…飲めますか?」
「…ありがとう」
侍女が家令から受け取ったグラスを差し出すと、受け取った女は水を一口飲んで、ふうっと息を吐きました。
「とりあえず、休め。寝床を用意する」
「いいえ」
男は女に横になることを勧めましたが、女は首を振りました。

