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夢の欠片(くすくす姫サイドストーリー)
第2章 中編
「私達は、ここに居る訳には参りません」
そう言うと女はやんわりと男の体を押しやって、長椅子の上で身を離しました。男は辛そうに眉を寄せましたが、女はそちらに目を向けず、低い声で、しかしはっきりと呟きました。
「しばらく休ませて頂いたら、出て行きますわ」
「何だと?!」
「姫様!」
「助けて頂いて、ありがとうございました。それは、感謝しております…最期をあそこで迎えなくても、良くなったのだもの。でも、私はここには居られません」
「姫様、せっかく助かった命なんですよ?!ずっとは無理でも、せめてしばらくこちらに置いて頂いても…もう少し体調が落ち着かれるまで」
「それは出来ないわ」
女は、頑として言い張りました。
「ご迷惑を掛けたく無いの。もう決めてしまったことですもの」
女の言葉を聞いた男は怒りと悲しみの入り混じった気持ちを抑えながら、こちらを見ない女の事を睨み付けました。

「…ここを出て、どうする気なんだ」
問い掛けても、女は答えません。答えないのではなく、答える言葉を持って居ないのかもしれません。
そんな女を見ていた男の口から、言いたくもない言葉が零れました。
「また、自害するつもりか」
女はぴくっと体を振るわせましたが、口は噤んだままでした。それを見ていた男の忍耐が、遂に限界となって切れました。

「どうしてだ?!何で今更死ななきゃならねぇんだよ!旦那に知れて折檻されてたにしても、お前らは死んだ事になったんだぞ?!生きてる事が知れない限り、連れ戻される心配も無ぇだろうが!」

「仕方無いのよ!!貴方の重荷になりたくないもの!!」
男に畳みかけられて、女はようやく口を開きました。そして、叫ぶように答えた後で、ふらりと椅子にくずおれました。
「おい!?」
「姫様!」
「…平気…大丈夫…」
女はゆっくり身を起こしましたが、その顔には血の気が有りませんでした。

「顔色が宜しくないですな。体のお疲れに、心労が重なられたのでしょう」
家令は女の様子を見て、侍女を見て、主である男を見た後、言いました。

「当主では無く、貴女方をお助けした私からお願い致します。せっかく助けた命を粗末にされては、寝覚めが悪う御座います。お二人は、命を救った事ーーでなければ、あちらの御館から連れ出して差し上げた事に関しては、感謝されてるとおっしゃいましたね?」
家令の言葉に、女と侍女は頷きました。
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