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夢の欠片(くすくす姫サイドストーリー)
第2章 中編

「どうして死のうなんて決めたんだ?それも、どうして今日までに死ななきゃならなかったんだ?助かっても、家を出られても、どうして未だに考えを変えねぇんだ?」
「…貴方様の重荷になりたくないとおっしゃっておられましたが」
「重荷って、何だよ…居なくなられる方が、よっぽど重荷だ」
女の言葉を繰り返した家令に、男は独り言の様な呟きを漏らしました。
「お二人とも、今日はかなりお疲れになったでしょうから、あれが精一杯だったのではないかと…明日落ち着かれたら、もう一度お話なさってみてはいかがですか?」
「…そうだな。俺ももう休む」
女の無事が分かっているだけ、昨晩よりはましな眠りに就けるでしょう。
家令にもう一度礼を言い、男は椅子から立ち上がりました。
「大丈夫か、顔色が悪いぞ」
「大丈夫だ。ちょっと寝不足なだけだ」
「感心しないなあ。ちゃんと食って、ちゃんと寝ろよ」
「放っとけ」
領主の土地を借りて果物園を広げる話は、順調に進んでおりました。土地を伐り開き、開墾して耕して施肥を行い、次の季節からはいよいよ作物を植えていこうかという話を詰めている所です。
この話し合いの予定は、昨日は男の屋敷で、今日と明日は友人の館で行われることが、早くから決まっておりました。男にしてみれば、本当は予定を全て反故にして女の様子を見ていたかったのですが、家令に「いつもと違うお振る舞いをなさるのは危険です」と止められ、渋々従ったのでした。
出掛ける前に女のいる部屋を覗いてみたところ、女はまだ眠っており、侍女だけが既に目覚めて女の様子を心配そうに窺っておりました。男は女を起こさぬように静かに部屋を後にしましたが、気持ちは重く沈んでいました。
「いいか。お前はお前一人の体じゃないんだぞ。いよいよ大仕事の仕上げなんだからな、気をつけてくれよ」
「言っとけ、馬鹿」
男が友人の軽口をいなしていると、扉を叩く音がしました。
「お話し中、失礼致します。お茶をお持ちしましたわ」
扉を開けて入って来たのは、友人の夫人と侍女でした。
「おお、ありがとう。ちょうど話の区切りが着いた所だよ」
「奥様、ご無沙汰しております。お加減はいかがですか」
男は久し振りに会う夫人に、挨拶致しました。
二人目の子を身籠もっているためか、以前よりいささかゆったりとした服を着ておりましたが、お腹はまだ目立ってはおりません。
「…貴方様の重荷になりたくないとおっしゃっておられましたが」
「重荷って、何だよ…居なくなられる方が、よっぽど重荷だ」
女の言葉を繰り返した家令に、男は独り言の様な呟きを漏らしました。
「お二人とも、今日はかなりお疲れになったでしょうから、あれが精一杯だったのではないかと…明日落ち着かれたら、もう一度お話なさってみてはいかがですか?」
「…そうだな。俺ももう休む」
女の無事が分かっているだけ、昨晩よりはましな眠りに就けるでしょう。
家令にもう一度礼を言い、男は椅子から立ち上がりました。
「大丈夫か、顔色が悪いぞ」
「大丈夫だ。ちょっと寝不足なだけだ」
「感心しないなあ。ちゃんと食って、ちゃんと寝ろよ」
「放っとけ」
領主の土地を借りて果物園を広げる話は、順調に進んでおりました。土地を伐り開き、開墾して耕して施肥を行い、次の季節からはいよいよ作物を植えていこうかという話を詰めている所です。
この話し合いの予定は、昨日は男の屋敷で、今日と明日は友人の館で行われることが、早くから決まっておりました。男にしてみれば、本当は予定を全て反故にして女の様子を見ていたかったのですが、家令に「いつもと違うお振る舞いをなさるのは危険です」と止められ、渋々従ったのでした。
出掛ける前に女のいる部屋を覗いてみたところ、女はまだ眠っており、侍女だけが既に目覚めて女の様子を心配そうに窺っておりました。男は女を起こさぬように静かに部屋を後にしましたが、気持ちは重く沈んでいました。
「いいか。お前はお前一人の体じゃないんだぞ。いよいよ大仕事の仕上げなんだからな、気をつけてくれよ」
「言っとけ、馬鹿」
男が友人の軽口をいなしていると、扉を叩く音がしました。
「お話し中、失礼致します。お茶をお持ちしましたわ」
扉を開けて入って来たのは、友人の夫人と侍女でした。
「おお、ありがとう。ちょうど話の区切りが着いた所だよ」
「奥様、ご無沙汰しております。お加減はいかがですか」
男は久し振りに会う夫人に、挨拶致しました。
二人目の子を身籠もっているためか、以前よりいささかゆったりとした服を着ておりましたが、お腹はまだ目立ってはおりません。

