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夢の欠片(くすくす姫サイドストーリー)
第2章 中編
男は何とも言えぬ感慨に包まれて、未だ口を噤んでいる女の手に、壊れ物にするようにそっと触れてみました。触れた手は暖かく、拒否されては居ない様だと感じた男は、女の手を緩く握りました。

「俺の子だよな…?」
「……」
「頼む。そうだと言ってくれ」
重ねて言っても、女は返事を致しません。

「どうして、すぐ教えちゃくれなかったんだ…いや、それよりも…」
男は握った手に額を付ける様にして、頭を垂れました。

「済まねぇ。お前だけを辛い目に合わせて…気付いてやれなくて、悪かった」
「…全部、出鱈目よ」
「何?!」
女はやっと口を開きましたが、出て来たのは素っ気ない言葉でした。

「忘れて。今の話は全部、出鱈目よ」
「何言ってんだ…?お前の言ってる事の方が、出鱈目だろうが!俺の子が腹に居るんだろ?」
「いいえ!あなたの子じゃ無いわ!」
一瞬虚を突かれた男の手から、女は自分の手を引きました。

「あなたの子じゃ無い。私の子どもよ。誰かの子じゃなくて、私だけの子よ」
女はそう言うと、両手でお腹を撫でました。

「この子は、私の子よ。生まれて来て酷い目に遭う位なら、誰にも知られない内に一緒に消えようと思っていたけれど…外に出られて、貴方にも知られてしまったのですもの。もう、消えたりしなくたって、良いのよね…」
お腹を撫でていた女の肩から、少しずつ力が抜けていきました。尖っていた声が柔らかくなり、ほんの少し震え始めました。

「産むわ。一人で、どこかで産むわ…あの家から、出られたんだもの。産んで、どこか遠くで育てるわ」
「おい待てよ!遠くって…正気か?!当ては有るのかよ!」
「当てなんか無くたって、産むわ!」
女は男を見上げました。その顔は涙に塗れていましたが驚くほど生き生きと美しく、男はまた女に心を奪われました。

「ありがとう、私に外の世界を見せてくれて、幸せで素晴らしい時間をくれて…それだけでも、想像も出来ない程たくさんの物を貰ったのに、その上、鳥籠から連れ出してくれて、こんな、宝物まで…」
微笑みながらお腹を撫でる女の顔は既に、母親らしい慈愛に満ちておりました。

「私、もう十分幸せよ。あなたの重荷にだけは、なりたくないの。これ以上なんて、望まない…お元気でね。幸せになって。貴方の幸せとお仕事の成功を、いつも、ずっと、祈ってる」
「馬鹿か、お前は!!」
男は女を抱き寄せました。
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