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夢の欠片(くすくす姫サイドストーリー)
第2章 中編
「やっとだ。やっとこうやって、俺の手の中に来てくれたんだ。遠くへなんか、誰がやるかよ!」
「でも」
「こいつぁ俺の子だ。俺にも決める権利は有る筈だ」
女は答えませんでしたが、男は女を抱き締めて、髪に口づけました。

「どこにも行かせねえ。俺に頼ってくれ。俺の目の届く場所に居ろ」
「無理よ!」
「無理なんかじゃ無え、当たり前だろ?腹ん中に俺の子がいるのに、なんで他所に行く必要がある?こんな状況だ、しばらくは籠の鳥にしちまうかもしれねぇが…不自由はさせねえ」
「…だって…どんな迷惑を掛けるか、分からないのに」
「お前の事で迷惑な事なんざ無ぇよ」
「でも、あの人が…どんな事をするか…」
「お前と俺の繋がりを知ってるのは、薄々感付いてそうな奴も含めたとしても、三人だけだ。お前の侍女とクロウと、あと一人…そいつらは、他言はしねぇ筈だ。侍女はお前の味方だし、クロウは何の益も無ぇ事ぁしねえ。もう一人も、なんとかする。あとは…どんな手を使ってでも、隠し通すさ」
「だけど…将来奥様がいらした時に、私なんかが居たら」
「は?何言ってんだ、お前」
本気で心配している女に、男は本気で腹を立てました。

「だから、これからちゃんとした奥様をもらって、お家を担っていくのに、私みたいな女が居たら」
「本気で馬鹿か、お前は!?俺はお前以外の女なんざ要らねぇよ!!」
「…だけど」
男はお腹を触っている女の手の上に、手を重ねながら言いました。

「こいつに感謝してる。こいつが出来なきゃ、お前は家を出たりゃあしなかったろ」
「それは」
「責めてるわけじゃ無ぇよ。お前の結婚は、家同士が決めた事だろ?簡単に終わらせる事なんか出来ねぇし、あの家から出られねぇのだって当然だ。だから、今迄諦めてた。だがもう止めだ、俺の知らねぇ所なんかにゃ行かせねえ」
「…ほんとに、いいの?」
「居なくなられる方が、よっぽど困る。お前が毒飲むって聞いてから今日まで、本気ですげぇ困ったぞ」
ここしばらくの出来事を思い出しながら男がぼやくと、女はくすりと笑いました。
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