この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
夢の欠片(くすくす姫サイドストーリー)
第2章 中編

「今日は前から約束してる仕事があるから、出掛けなきゃならねえ。ついでに、と言っちゃ何だが、俺とお前の事を薄々感付いてるかもしれねぇ奴に、今後の事を相談してくる。その結果によっちゃあ、また離れて暮らさなきゃならねぇ事になるが…」
「ええ」
女は頷いて男の手を握り返し、まだ膨らんでいないお腹を愛おしげに見つめました。
「この子が居るんだもの、きっと大丈夫…どこに行ったとしても、会えなくなっても、あなたと一緒だって、思えるもの」
男は女の手の甲と指輪と、それから頬に、口づけました。
「どんな結果になっても、出来る限りの事をする。決して悪い様にゃあしねえから、逃げ出したりしねぇで二人で」
そこで言葉を止めた男は、微笑みながら女のお腹を撫で、今言ったことを言い直しました。
「…三人で、いい子で留守番しててくれ」
「良し。あとは、現地で段取り通りに進めて行くだけだ」
「お疲れ様。来年が楽しみだな」
男は長い溜息を吐き、友人はにこやかに笑いました。
数年に渡った仕事が、今日で一段落したのです。
友人にとって代替わりして初めての仕事であり、それをきっかけとして首尾よく妻を娶ることも出来た、記念すべき仕事です。
果樹は自然に属するものです。引き渡した後、実際に果樹園として運営が始まってからも、様々な対応が必要です。
ではありますが、そこから先は園主の仕事です。
土地を提供して園地を整備するまでと、その後その土地から上がる利益の管理が友人の領主としての仕事の大半ですので、肩の荷が下りた様子になるのも無理はないでしょう。
「安定して作物が穫れる様になるまでは、まだしばらくかかるがな。果樹の相手は一朝一夕にゃあいかないもんだ」
「そうだなあ。お前の仕事は、気が長く無いと無理だな…育てるってのは、人にしろ樹にしろ、手間の掛かる物だな」
妻が二人目の子を身籠ったことで上の子がぐずるようになり、手を焼いている真っ最中の友人は、しみじみとそう言いました。
「俺は気が長え方じゃねえと思うぞ?天気や土や樹は、急かせたってどうにもならねぇだろうが」
男が苦笑しながら答えるのを眺めながら、友人は微笑みました。
「まあ、そうだな。お前、俺には短気だものな」
「そりゃあ、お前が要らねぇ事ばっかり言ってくるからだろ」
「…安心したぞ」
「はあ?」
男は友人の噛み合わない返事に、変な顔をしました。
「ええ」
女は頷いて男の手を握り返し、まだ膨らんでいないお腹を愛おしげに見つめました。
「この子が居るんだもの、きっと大丈夫…どこに行ったとしても、会えなくなっても、あなたと一緒だって、思えるもの」
男は女の手の甲と指輪と、それから頬に、口づけました。
「どんな結果になっても、出来る限りの事をする。決して悪い様にゃあしねえから、逃げ出したりしねぇで二人で」
そこで言葉を止めた男は、微笑みながら女のお腹を撫で、今言ったことを言い直しました。
「…三人で、いい子で留守番しててくれ」
「良し。あとは、現地で段取り通りに進めて行くだけだ」
「お疲れ様。来年が楽しみだな」
男は長い溜息を吐き、友人はにこやかに笑いました。
数年に渡った仕事が、今日で一段落したのです。
友人にとって代替わりして初めての仕事であり、それをきっかけとして首尾よく妻を娶ることも出来た、記念すべき仕事です。
果樹は自然に属するものです。引き渡した後、実際に果樹園として運営が始まってからも、様々な対応が必要です。
ではありますが、そこから先は園主の仕事です。
土地を提供して園地を整備するまでと、その後その土地から上がる利益の管理が友人の領主としての仕事の大半ですので、肩の荷が下りた様子になるのも無理はないでしょう。
「安定して作物が穫れる様になるまでは、まだしばらくかかるがな。果樹の相手は一朝一夕にゃあいかないもんだ」
「そうだなあ。お前の仕事は、気が長く無いと無理だな…育てるってのは、人にしろ樹にしろ、手間の掛かる物だな」
妻が二人目の子を身籠ったことで上の子がぐずるようになり、手を焼いている真っ最中の友人は、しみじみとそう言いました。
「俺は気が長え方じゃねえと思うぞ?天気や土や樹は、急かせたってどうにもならねぇだろうが」
男が苦笑しながら答えるのを眺めながら、友人は微笑みました。
「まあ、そうだな。お前、俺には短気だものな」
「そりゃあ、お前が要らねぇ事ばっかり言ってくるからだろ」
「…安心したぞ」
「はあ?」
男は友人の噛み合わない返事に、変な顔をしました。

