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夢の欠片(くすくす姫サイドストーリー)
第2章 中編

「出来れば、あの家にゃあ帰したくねえ。俺んとこじゃ無くて良い、どこかでひっそり暮らさせてやりてえ。それにゃあ俺の力だけじゃあ不足だ。頼む、助けてくれねぇか」
「お前…正気か?」
「正気かって?お前から見たら正気の沙汰じゃねぇかも知れねぇが、俺は正気だ。本気で頼んでる」
頭を下げる男に、友人は溜め息を吐きました。
「無理だ、彼女はすぐ帰せ。第一、そんな事をしたら一生人目を避けて暮らさなければいけないんだぞ?見付からない様に身を隠そうとするなら、お前の屋敷以外の場所に住まわせる必要も有る。お前の囲った場所から一歩も出られなくなるんだ、軟禁した夫とお前と、どこが違うんだ?」
男は唇を噛みましたが、頼んだ事を取り下げようとはしませんでした。
「頭を冷やせ。彼女は家に帰らせろ。誰の種だろうが、跡継ぎを産むんだ。夫の子だと言い張れば、たとえ不義の子かもしれなくても、他に子がない以上は黙認されるだろう。次代の領主の母になるんだ、そう酷い目には遭わない筈だ。連れ出しても、みすみす不幸にするだけだぞ」
「不幸?…幸せか不幸せかなんざ、本人が決めるもんだろ?それに」
男はこの話が始まってから初めて、友人の顔をまっすぐ見ました。
「あいつはずっと子が出来ない事を夫に責められて、折檻されてたんだぞ」
「なんだって!?」
静かな怒りと決意に満ちた男の目に、友人は気圧されました。
「ぱっと見ただけじゃ分からねぇ場所に、酷い痣や鞭で打った傷が、治る暇も無ぇ位頻繁に…俺との事が有る以前の何も落ち度が無かった頃にだって、難癖付けられて閉じ込められて…奥方をそんな目に遭わせる旦那の所になんざ、戻せるか?」
「それは…」
友人は衝撃を受けました。隣地の領主がそこまでの事をしているとは、思ってもみなかったのです。ですが、数少ない隣地の領主の記憶と照らし合わせてみると、そんな事は有り得ないと一蹴するには難しい人物である事は、否定し難い物でした。
「…だが、姦通は大罪だ。遊びならともかく、子まで出来たとなると…発覚したら二人とも罪人になるんだぞ。いや、その前に夫に殺されるか」
「は。それが不幸か?あいつを家に帰して酷ぇ目にあわせる位なら、あいつと一緒に殺された方がマシだ」
「これだけ言っても、分からないのか…」
友人は椅子に沈み込むように座り、頭を抱えました。
室内にはしばらく無言の時が流れました。
「お前…正気か?」
「正気かって?お前から見たら正気の沙汰じゃねぇかも知れねぇが、俺は正気だ。本気で頼んでる」
頭を下げる男に、友人は溜め息を吐きました。
「無理だ、彼女はすぐ帰せ。第一、そんな事をしたら一生人目を避けて暮らさなければいけないんだぞ?見付からない様に身を隠そうとするなら、お前の屋敷以外の場所に住まわせる必要も有る。お前の囲った場所から一歩も出られなくなるんだ、軟禁した夫とお前と、どこが違うんだ?」
男は唇を噛みましたが、頼んだ事を取り下げようとはしませんでした。
「頭を冷やせ。彼女は家に帰らせろ。誰の種だろうが、跡継ぎを産むんだ。夫の子だと言い張れば、たとえ不義の子かもしれなくても、他に子がない以上は黙認されるだろう。次代の領主の母になるんだ、そう酷い目には遭わない筈だ。連れ出しても、みすみす不幸にするだけだぞ」
「不幸?…幸せか不幸せかなんざ、本人が決めるもんだろ?それに」
男はこの話が始まってから初めて、友人の顔をまっすぐ見ました。
「あいつはずっと子が出来ない事を夫に責められて、折檻されてたんだぞ」
「なんだって!?」
静かな怒りと決意に満ちた男の目に、友人は気圧されました。
「ぱっと見ただけじゃ分からねぇ場所に、酷い痣や鞭で打った傷が、治る暇も無ぇ位頻繁に…俺との事が有る以前の何も落ち度が無かった頃にだって、難癖付けられて閉じ込められて…奥方をそんな目に遭わせる旦那の所になんざ、戻せるか?」
「それは…」
友人は衝撃を受けました。隣地の領主がそこまでの事をしているとは、思ってもみなかったのです。ですが、数少ない隣地の領主の記憶と照らし合わせてみると、そんな事は有り得ないと一蹴するには難しい人物である事は、否定し難い物でした。
「…だが、姦通は大罪だ。遊びならともかく、子まで出来たとなると…発覚したら二人とも罪人になるんだぞ。いや、その前に夫に殺されるか」
「は。それが不幸か?あいつを家に帰して酷ぇ目にあわせる位なら、あいつと一緒に殺された方がマシだ」
「これだけ言っても、分からないのか…」
友人は椅子に沈み込むように座り、頭を抱えました。
室内にはしばらく無言の時が流れました。

