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姫巫女さまの夜伽噺
第2章 目覚めし巫女

「…お前、嫌な奴だな」

そう言ってしばらく沈黙してから
「安心しろよ。お前ら人間の命なんて
虫けらみたいにあっという間だろ」と
呟いて愛蘭を射抜いた。


「死に急ぐなよ。
せいぜい楽しめ」


「何よ、何も知らないくせに」


男は愛蘭の態度にイラついたのか
鼻をフンと鳴らした。


「知るかよ。土砂降りの雨の中、
こんな山奥で死にたがる女の気持ちなぞ
俺にはさっぱり分からん。
俺と穂高が外に出てなければ
お前確実に死んでたぞ」


まくしたてるでもなく
言い聞かせるでも無い
淡々とした口調に
愛蘭は毒気も痛みもふっつりと忘れた。


「…まぁ、ここからが本当の地獄かもしれないけどな」


最後の男の呟きに
愛蘭が眉をしかめると
もう1人の男が障子を開けて入ってきた。


「やぁ、目が覚めたかい?
気分はどう?」


爽やかな笑みに思わず愛蘭の緊張が解けた。
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