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姫巫女さまの夜伽噺
第7章 癇癪鼠
「…正直、あの鼠野郎にお前を差し出さなきゃいけないと知った時は
気が遠くなりそうだった。
なんで、と本気で思った…。
あいつはせこいから
お前に何かしでかすんじゃないか心配で…」
「私は大丈夫…」
でも、と伊良は後ろから抱きしめてくる志摩の腕に
そっと自分の手を重ねた。
「でも、ありがとう、志摩」
自分が大事にされていること
思われている事を実感して
伊良は照れ臭くもあり、
そして、なぜかくすぐったい様な歯がゆい様な感覚になった。
自分が求めていたものが、ここにある様な気がした。
「ところで志摩、鼠野郎って、播磨の事だよね?何がせこいの?」
その伊良の素朴な質問に
志摩はあー、とため息にも似た声を出し
しばらく沈黙した。
「…お前、十二支って知ってるか?」
「え、うん、もちろん」
「あいつが、その鼠だよ」
それに伊良は大声を出して驚いた。
あまりにも声が響くので
志摩にうるさいとほっぺたを摘まれる。