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姫巫女さまの夜伽噺
第8章 老舗蛞蝓
かろうじて人の形に近いが
こうして触れると、人とは全く違う。


それは、まるで柔らかいグミのようだった。
しかし、手や触れた皮膚は少しざらついている。


なんとも言えない感触に、伊良は腹をくくるしかないと
目をぎゅっとつぶった。


「怖がっているね。
それはそうだとも…。
私は人の形を保つのは苦手でね。
これでも精一杯なんだが、やはり怖いかい?」


温和な言い方に、伊良は怖がってしまった自分をどことなく恥じた。
何も知らないのに、怖がってはダメだと自分に言い聞かせる。


「大丈夫、です」


「ふふふ。無理はしなくてもいいよ。
人の女の子は皆、私を怖がるものだ。
それに、いつも穂高殿や志摩殿に見慣れていれば
私は不細工に見えるだろう」


緊張を取りたいのか
その柔らかな神は伊良を抱きしめながらニコニコと話す。


「私は蝓凪(くじな)。
今夜はよろしく、伊良殿」


にっこり笑うと、蝓凪は伊良に吸い付くように
べっとりと抱きついた。
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