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姫巫女さまの夜伽噺
第8章 老舗蛞蝓
蝓凪が去っていくと、毒で道に濡れた跡ができる。
満足そうにしながら去って行く姿に
伊良は安堵とともに、なぜか達成感もあった。



(良かった…満足してもらえたなら…)



しかし、体は動かず、その場に寝そべったまま
熱い体を横にした。


「ご苦労だったな、愛蘭」


声が聞こえて、目をうっすらと開ければ
そこには志摩が佇んでいて
毒液だらけの伊良に手を伸ばした。


「志摩、大丈夫なの、触って」


「いや…あまり良くはない。
だが、動けないだろう?」


式を使えばいいのに、志摩はあえて伊良を毒液の中から素手で救い出した。
志摩はその液体に触れると、少しだけ眉根を寄せて
複雑そうな顔をする。


「…よく耐えたな」


それだけ言うと伊良を抱きかかえ
すぐさま湯殿へと向かった。
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