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姫巫女さまの夜伽噺
第9章 穂高と志摩
伊良様、と近江がマッサージをしていた手を一旦止めて
伊良のことを見つめた。


「志摩様のお気持ちなのですよ、これは」


「志摩の?…どういうこと?」


「まだこちらに運ばれて間もない頃、
志摩様と穂高様は、寝込んでいる時、貴女の過去を覗かれたのです。
そうして、穂高様が貴女への処遇の多くを、志摩様に権限を託しました。
志摩様も責任感の強いお方です。
貴女のことをとても心配されていました。


そして、貴女と関わっていくうちに
姫巫女としての仕事の相手のことは
何も言わないようにしようとお考えになったのです。


なぜなら、言ってしまったら、その瞬間、
伊良様の中で頑張らなきゃいけない気持ちとか
この宿の為にとか思われてしまうのではないですか?」


近江の説明に、伊良は確かに、と頷く。


「その重圧を感じて欲しくない。
そして、のびのびといつものままでいて欲しい。
そう、志摩様はお考えなのです」


「…そう、なの?」



(…私のことを思って…?)



それに、近江は頷く。
伊良はなんともいえない気持ちが込み上げてきた。
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