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姫巫女さまの夜伽噺
第9章 穂高と志摩
三人でゆっくりと縫い物をして過ごしていると
いきなり戸がカタカタと音を立て始めた。


「あ、穂高様の式だ!」


美濃がかけつけて戸を開けると
そこからひょっこりと式が顔を出す。
紙で人型に作られたそれは
志摩と若干形が異なり、胸に書いてある文字も違っていた。


「わ!」


式は美濃を飛び越して
伊良の元へとすっ飛んでいった。
そして、伊良の裾を掴むと、くいくいと引っ張る。


「え、何これ、私?」


引っ張られるままついていこうとすると
部屋の外まで連れていかれそうになる。


「何これ、どうしたらいいの?」


慌てる伊良に、近江と美濃も首をかしげる。
その間にも、式は伊良を引っ張り出そうとしていた。


「うーん、おそらく、穂高様が呼んでらっしゃるんだとおもうんですけど…。
ついていけば、大丈夫だと思います。
ご一緒しましょうか?」


お願い、と近江に頼んだところ
近江が伊良と式に近づくと、ばちんとはじき返された。


「僕は駄目みたいですね。
一人で来るようにとのことでしょうね。
大丈夫です、穂高様の式なので」


というわけで、
伊良は式に引っ張られて、穂高の部屋へと向かった。
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