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姫巫女さまの夜伽噺
第9章 穂高と志摩
長い廊下をいくつも複雑に渡り
訳が分からなくなるほど歩くと
宿の突き当たりにも見える所に出た。


広い庭が広がっていて
苔と砂利であまりにも美しく整えられた庭園。


そこから細い屋根付きの廊下で繋がれた先に
一つの大きな屋敷が建っている。
式はそこへと伊良を案内した。


引き戸の前に立つと、式はシュルシュルと煙になって消える。


「中に、入れってこと?」


戸惑って立ち止まっていると
中から衣擦れの音がした。


「伊良だね。入っておいで。
ここには僕しかいないよ。
何もしないから、安心して」


穂高の声音は元気が無く
伊良は心配になりながら引き戸を開けた。


「え?」


そこに、穂高は座っていた。
畳の上に敷かれた布団。
真っ白な着物に身を包み
そして、その両目を覆うように
白い包帯が巻かれている。


「穂高?大丈夫なの!?」


伊良は戸を閉めると、慌てて彼のそばに駆け寄った。
穂高は包帯の下から見えているのか
優しく微笑んで「大丈夫だよ」と呟く。
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