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姫巫女さまの夜伽噺
第9章 穂高と志摩
「…大丈夫じゃないよね?一体どうしたの?
目を怪我したの?
志摩には伝えた?志摩なら治せるんじゃない?」
焦って早口にまくし立てる彼女を制し
穂高は伊良を正面に座らせた。
「伊良、落ち着いてまず座って」
その声は穂高のものだが
いつもとどこと無く違う。
部屋の中はひっそりとしていて人気がなく
どこか、具合が悪そうに見えた。
「あのね、伊良。今日は特別に呼んだんだ。
蝓凪様を、とてもご満足させられたという噂話で
宿も山も持ちっきりだよ。
だから、君に褒美をとらせないといけないと思って」
穂高はやんわりと微笑む。
しかし、包帯のせいでいつもの宝石の目は見えない。
「褒美なんていらないわ…。
だって、救ってもらったのは私の方だもん…」
伊良はそう呟くと、志摩のことを思い出した。
先ほどまで双子が話していたように
自分はとても大事にされていると感じていた。