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姫巫女さまの夜伽噺
第9章 穂高と志摩
「…驚いた?」
微笑む穂高は、いつもと変わりなく美しい。
しかし、その瞳は
ーーー漆黒だった。
「穂高…?」
「そうだよ、これが、人間としての僕だよ」
伊良は訳がわからない。
穂高の頬に手を当てて
それが彼であることを確かめる。
穂高はその伊良を見つめ
まぶたの裏に漆黒の瞳を隠すと
伊良を抱きしめた。
ふわりと、穂高の香りがする。
伊良はなぜかわからないが、穂高をぎゅっと抱きとめた。
「…穂高…」
「うん。僕だよ。人間の僕だ。
今は、なんの力もない。
妖怪や神に襲われたら、それこそひとたまりもない。ただの人間だよ」