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姫巫女さまの夜伽噺
第9章 穂高と志摩
「…僕は、神にはなれなかったんだ…」
あまりにもポツリと
それこそ、雪の一粒目が大地に落ちて溶けるかのように。
穂高は声を発した。
「母親の力が残っていてね。
だから、満月の夜になると、僕は完全に人間になってしまうんだ。
月は女性の力を強くするから」
穂高はそう言うと
深く息を吸い込んで吐いた。
伊良は何も言えず、
ただただ黙って、穂高の話に耳を傾けた。
「新月の時には、僕の力は最も強まる。
そんな時だったよ、君を山で拾ったのは。
懐かしいな、もう随分と前のように感じるよ」
「うん、私も、すごく前のことのように感じる」
「僕は最初、とても喜んだんだ。
この宿の為にんると思ってね。
だけども、やっぱり、人間に対する憎しみも
女性に対する憎しみも消えなくて
僕は、君がきてから、だいぶ心を乱されていたよ。
まあ、前々からの部分もあって
だから、志摩がいてくれないとダメなんだけどね」