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姫巫女さまの夜伽噺
第9章 穂高と志摩
「なんで、志摩が…?」
その質問に穂高は微笑む。
「伊良は本当に志摩のことが大好きだね。
もう少し、僕を見てくれてもいいんじゃないかと、嫉妬してしまうくらいだよ」
穂高は伊良の唇に
自分の唇を重ねた。
「志摩も、はぐれた神でね。
それこそ、ものすごい妖力を持った、狐の神だ。
妖力が強ければ強いほど、尾っぽの数は増える。
志摩は五つも生えているでしょ?
元々は神に仕える神獣だったんだけれども
人間の願いを聞き入れたい一心で多くの修行をし
そしていつしか治癒の能力を高めて行った。
そこからは奉られるようになって
人々の信仰を経て神格化した。
しかし、人は薄情だから
そんな志摩の存在をいつしか忘れ去ってしまい
社を取り壊されて、志摩は行き場をなくしたんだ。
僕を拾ったこの山の神は
そんな時に、荒くれていた志摩も拾った。
志摩は、この山の力の調律をする為に
うってつけの存在だったんだ。
山の神は自分が隠居する為に
代わりに山の統治をする神を探していた。
僕は父神の力が強く、この山を制御するにはうってつけだったんだ。
しかし、満月になると僕は人間になってしまうから
僕の代わりに制御し、そして山々と神の力を調律できる者が必要だった。
だから、山の神は僕と志摩とでこの山を制御するようにし、
居場所のない僕たちに、とっておきの居場所を与えてくれたんだよ」