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姫巫女さまの夜伽噺
第9章 穂高と志摩
穂高はもう一度
伊良に口づけをした。


その瞬間、穂高の深い悲しみやら痛みやらが
流れ込んできたかのように感じられて
伊良の目から涙がぼたぼたと溢れ出した。


「ごめん、泣かせるつもりはなかったんだけど…」


「…ううん、違うの…。
なんだか、込み上げてきちゃって…。
人間の穂高のほうが、優しいんだね」


「僕は、いつだって優しいよ」


穂高は呆れた顔をしたあとに、優しく微笑んで
伊良を抱きしめながら口づけをする。
相変わらず滑らかな舌触りで
舌が絡まり合うとなんとも切なかった。


「私は、人間の穂高でも、神様の穂高でも
どっちでも好きだし、魅力的だと思うよ。
だって、その人って、持っている側面ていっぱいあると思うもん。


もし、一つの顔しか持っていないのならば
それはきっと、まだまだ自分と
向き合えていないことなのかもしれない。


私は、今のこの状況に感謝している。
ダメだった私が、こんなに愛されて
何もしていないのに、みんな褒めてくれるもん。


人間に戻りたくないって行ったら嘘だよ。
親も友達も心配だし。
だけどね、もし、戻るにしても、今じゃないと思うの」


それはなぜ、と穂高が問いかける。
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