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姫巫女さまの夜伽噺
第10章 人間の世界
「ねぇ、志摩、どうしたの?」
志摩は少し嫌がる彼女を
強引に奥へ奥へと連れて行く。
その様子に、満月の影響なのかとは思いつつも
いつもとあまりにも違っているので、伊良は怖くなった。
(…え、志摩が怖い…?)
そんな感情を、志摩に対して持ったことがなかった。
どうしてそう思うのか分からないでいると
露天の中へとザバザバ入って行く。
流石にためらったのだが
「来い」と強く引っ張られて
伊良は着物のまま中へと入る。
薬湯は温かく、足が気持ちいい。
そのまま歩かされ、湯けむりの中を進むと
突如目の前に大きな岩が現れて
進めば進むほど洞窟のようになって行く。
「こないだの露天と一緒なの?
この先を抜けると、川があって、逃げたりできるって。
結界が貼ってあるから、無理だっていってたけど…」
それに志摩は答えず、やはり奥へ奥へと進む。
洞窟の中は暗く
志摩が手に持った灯りだけが頼りだった。