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姫巫女さまの夜伽噺
第10章 人間の世界
「痛っ…!」
立ち上がって逃げようとすると
追いついた志摩に髪の毛を引っ張り上げられる。
「いや、離して!」
「暴れるな!」
見れば、志摩の顔や手に、鱗が生えている。
顔立ちも違っていて、目もつり上がった志摩がいた。
「やだ、あんた誰よ!何するの、離してよ!」
(志摩じゃない。志摩は、私のことを名前で呼ぶもの…)
暴れていると、その得体の知れない男の手が
伊良のお腹にドスンと打ち込まれた。
「かっ…ぅ…」
みぞおちに入り込み、呼吸が止まる。
動けなくなった伊良を、男はひょいと肩に持ち上げた。
「暴れなきゃ、痛い目見ずに済んだのによ…。
全くこれだから人間の女は馬鹿だ」
志摩とは思えない乱暴な口調と声。
伊良は肩に抱えられたまま
痛みを堪えることしかできない。
「よく俺が志摩じゃないと気づいたな」
男はそう言って伊良のお尻をさすった。
着物の裾から手を入れて
足首、ふくらはぎと手が這う。
「やだ、やめてよ!」
思わず上体を起こして男の顔を見れば
爬虫類にも似た顔立ちの、鱗に覆われた顔があった。